【真紘side】
 「・・・きっと、棗の気持ちが僕に向く望みは限りなく薄いんだろうけど。でも僕、諦めないで待つよ。多分、辛いこともたくさんあるだろうけど、諦めない」
 静かに、苦しそうに、辛そうに。
 でもしっかりとした口調でそう言い切った千晴くんから私は目を逸らせない。
 どれだけ千晴くんが辛くて苦しいかはきっと私には計り知れない。
 でも、一つだけ言い切れることは。
 「千晴くんは、強いね」
 「どうして?」
 きょとんとした顔でこちらを見た千晴くんに「なんでもないよ」と返しながら、私はソファから立ち上がる。
 何度か伸びをした後、クルリと後ろを振り返って。
 「帰ろっか!」
 「うん」
 明るい声で言った私に、千晴くんも頷いた。