海を見つめながら、しみじみと連音さんは龍羽に返事をする。
 金網の上では、様々な具材が美味しそうな音を立てて焼けている。
 普段なら私も素直に喜べるのだが、今日の私は別のことに意識が行ってしまっている。
 ・・・千晴くん。
 千晴くんは棗さんに紙皿にピーマンを大量にいれられて「自分の苦手なものばっかりいれないで、棗!」と抗議している。
 棗さんはそんな千晴くんの抗議を「千晴はちっちゃいんだからー。いっぱい食べて大きくなるんだよー」とのらりくらりかわしている。
 一見いつもと変わらない様子だけど、どこか違う二人。
 私がいなくなってから、きっと告白したんだ千晴くん・・・。
 棗さんの顔もちょっと赤いし、お互いがお互いのことを意識しあっているように見える。
 朝の二人と明らかに違う・・・。
 ・・・告白、成功したのかな。
 二人のことが気になって、なかなか箸が進まない。
 「・・・ろ、・・・ひろ、真紘!」
 「え!?あ、どうしたの、香くん」
 「箸進んでないけど、どうかした?焦げてる?」
 「ううん!気の所為だよ」
 「そうか」
 鋭いな、香くん。
 人一倍周りを見ている。
 私も気を取り直して、皿に乗った野菜やお肉を口に突っ込んだ。

 コンコン。
 「はーい?」
 バーベキューも終わって、海も満喫し、帰る準備をするために部屋に戻ってきた。
 悠理にもちゃんと服を返してもらって、荷物をまとめていると、小さくノック音がする。
 急ぎ足でドアに近づいて扉を開くと、そこに立っていたのは弱々しく笑う千晴くんだった。
 「千晴くん?どうかした・・・?」
 「急にごめんね、真紘」
 「私は大丈夫だよ。えっと、とりあえず部屋に入ろ?」
 「うん」
 部屋に置いてあったフカフカのソファに二人で並んで座る。
 「・・・・・・」
 喋るきっかけが見つからなくて、押し黙る。
 聞けないよね、告白どうだった?なんて。
 「真紘、ごめんね」
 「え、何が?」
 言葉を選んでいると、先に千晴くんが喋った。
 特に謝られるようなことはされていないので、頭上にハテナマークが浮かぶ。
 「今日、僕のこと気にしてバーベキュー楽しめてなかったでしょ?」
 「それは、千晴くんのせいじゃないよ。ただちょっと暑くて体調悪かっただけで」
 返答、間違っていないかな。
 不快な思いさせていないといいんだけど。
 「・・・棗に告白したんだ、僕」