急いで距離をとろうと顔を離す私を逃さないとでもいうかのように、悠理は近づく。
 私よりも悠理のスピードのほうが勝って距離が埋まる。
 「・・・っはあ、はぁ」
 息があがっている私に対して、悠理は余裕そうに微かに口角をあげている。
 ・・・なんか、ムカつく。
 「真紘ー!悠理起きた〜!?」
 「あ、はい!」
 連音さんの声が聞こえてなおも近づいてこようとする悠理をドンッと突き飛ばし返事をする。
 「真紘、こっちだ」
 香くんと一緒におおかたの荷物を運び終えた一さんが手招きをするので不満そうな顔をしている悠理を立たせ、引っ張って連音さんの別荘の前まで歩く。
 全然手伝えなかったな。
 申し訳ない。
 「とりあえず着替えて来て!午前中は撮影、午後からは自由だよ」
 連音さんの一言で、私達は指定された部屋に入って行った。

 ちょっと遅れてしまった。
 焦りながらも待ち合わせ場所まで歩く。
 潮の香りがする風が頬をなでる。
 案の定、もう全員待ち合わせ場所についていて、私を待ってくれていた。
 「遅かったな、真紘!」
 「ごめんごめん。別荘広くてちょっと迷っちゃって」
 「あー、わかる。俺も初めて来たときは一時間ぐらいさまよってたわ」
 「一時間は流石にもり過ぎじゃない?」
 「いやいやこれが本当なんだって!」
 「うっそだぁ〜」
 龍羽とやいのやいの言い合う。
 「え〜、龍羽腹筋バッキバキじゃん」
 「意外か?」
 「いや、イメージどおり」
 「触ってもいいけど」
 「それは遠慮させていただきまする」
 「なんだよその喋り方」
 「ちょっと近い」
 龍羽のツッコミとおんなじタイミングで不機嫌そうな悠理が口を開いたかと思うと、龍羽から遠ざけるように私の腕を掴んでグイッと自分のほうに引き寄せる。
 「うわ、ちょ」
 突然のことになす術もなく、意味を持たない声を出しながら私は悠理の腕の中にすっぽりと収まった。
 「嫉妬こわいねー」
 「真紘、嫌だったら怒っていいよ?」
 「束縛が激しいんじゃない?」
 「束縛が激しい男は嫌われるぞ」
 「香、うるさい。それに、真紘は俺のこと嫌いにならないから」
 その自信はどこから!?
 ・・・悠理のこと、好きだけどさ。
 なんとなく負けた感じがして、悔しくて悠理のことを軽く睨む。
 私のそんな視線に気づいて悠理は不敵に笑う。
 そんな顔すらかっこよくて顔を赤らめながらそらす。
 やばい、私絶対何かの病気だ。