「分かりました」
 海かぁ、久しぶりだなあ・・・。
 いつぶりだろう?
 小学生のとき、お兄ちゃんと一緒に行ったのが最後だっけ?
 「え~、真紘水着着ないの?」
 「うげ」
 来たよ。
 いつの間に目を覚ましたの?
 悠理は私と付き合ってからというもの、ますます甘くなっている。
 距離も近いし。
 まあ、距離は最初っからバグってたんだけどね。
 「着ないに決まってるでしょ」
 「え~、どうして?」
 「どうしてって・・・」
 分かってるでしょ、絶対。
 「真紘のビキニ、見たい」
 「は、はぁ!?」
 ビキニ!?
 あんな露出度の高い水着なんて着れないよ!
 第一、持ってないし。
 「ダメ?」
 「ダメ!というか無理!」
 コテン、と首を傾げ下から上目遣いに見てくる悠理に、私は全力で首を振る。
 それはもう、もげそうなぐらい。
 「ふ~ん・・・」
 「え」
 もっとしつこく言ってくるかと思っていたのに、あっさりと悠理は引き下がる。
 だから、私はそのあとは安心していたんだ。

 「海だなー!気持ちー!」
 連音さんが運転する車と、龍羽が運転する車の二台で、私たちは連音さんのプライベートビーチに来ていた。
 やっぱり、海は開放感がすごい。
 プライベートビーチは超綺麗で、青い海と白い砂浜の色のコントラストが美しい。
 早速龍羽と棗さんは足首まで海に入ってるし、千晴くんは砂浜で一生懸命歩いてるカニをじっと見つめてる。
 一さんと香くんはみんなの荷物運びを黙々としている。
 連音さんは早速海の写真を数枚撮ってる。
 私は、車の中で寝てしまった悠理を必死に起こしてる途中。
 性格出てるよね、なんか・・・。
 というか、ぜんっぜん起きないんだけど!
 「ゆ~う~り~!起~き~て~!」
 ペシペシ頬を叩くも悠理は目覚める気配もない。
 「起きないなら、キスするよ?・・・なーんてね、何言ってんだろ私、あはは」
 「してくれんの?」
 はああぁぁぁ!!??
 起きてたの!?
 というか、確信犯でしょ!
 最悪だ!
 「ほら、してよ」
 「・・・っ」
 私にお構いなしで悠理は顔を突き出す。
 腹立つぐらい綺麗な肌、顔立ち。
 「真紘」
 「っ、目、つぶって・・・」
 「ん」
 長いまつ毛。
 一つ一つに意識が行ってしまう。
 チュ、とただ触れるだけの軽いキスをする。
 私にはこれだけで精一杯。