「‥‥‥?どうして真紘、笑ってるの?」
 「いや、ごめん、なんか面白くて‥‥‥ククッ」
 「?」
 申し訳ないと思うのに笑いは止まらない。
 さすがに失礼だと思って、なんとか笑いを止めた。
 「‥‥‥真紘、私わかった!」
 突然日葵がそう言ってガタッと席を立った。
 周りの視線が日葵に集まる。
 日葵はそんな視線に、少し居心地悪そうにして座り直す。
 「日葵、何がわかったの?」
 「えっとね、多分、真紘は瀬戸悠理のことが好きなんだよ!」
 「‥‥‥はあ?」
 びっくりするほど間抜けな声が出た。
 私が、悠理を?
 いや、ないないないない。
 そりゃ、嫌いかって聞かれるとそうじゃないけど!
 自分勝手だし、意味もなくキスするし!
 ‥‥‥本当に、意味なく、だよね。
 そこまで考えてまた胸が痛んだ。
 でも、そんな痛みに気づかないふりをする私は卑怯だ。
 「真紘は、今まで数えきれないほどの告白をされてきたよね?」
 「‥‥‥まあ、そだね」
 素直に肯定するのもなんだか恥ずかしくて、一拍置いてから頷く。
 「でも、その告白ではフラッシュバックは起きなかったんでしょ?それって、告白してきた女子とは付き合う可能性がゼロ、もっと言えば、嫌われても別に構わないからじゃない?」
 「言われてみれば、そうかも」
 「でしょ?だから、真紘が瀬戸悠理からの告白でフラッシュバックが起こったのは真紘の中に、付き合ってから瀬戸悠理に『思ってたのと違った』って思われたくない感情があったからなんだよ!」
 そこまで早口で言うと日葵は「名探偵日葵、参上!」と胸を張った。
 「いや、でも‥‥‥悠理に嫌われたくなかったのは、モデル仲間としてペアで仕事していくうえで‥‥‥」
 「あ〜もう!そうやってどうして自分の気持ちに蓋をするの!?もっと真紘は自分の気持ちに素直になりなよ!」
 自分の、気持ち‥‥‥?
 確かにこの悠理に寄せている感情が“恋”というものならば、納得がいくような気もする。
 でも‥‥‥それでも、私は‥‥‥。
 「“あの日”のこと、もう忘れて前に進みなよ。今、真紘が楽しまないともったいないよ‥‥‥」
 そうポツリと呟く日葵の声を聞いて、私は顔をあげた。
 「瀬戸悠理は、真紘の中身まで見て真紘のことを好きになってくれたんでしょ?だったらきっと大丈夫だよ!」
 「でも、まだ好きって決まったわけじゃ‥‥‥」