「お疲れ様、真紘」
 「連音さん、お疲れ様です」
 「だいぶモデルにも慣れてきたよね」
 「そうですか?」
 合宿も終わり、いつもの日常が戻ってきた。
 今は、私の撮影が終わってリビングでスマホを見ているところ。
 ‥‥‥悠理はまだ撮影中。
 顔を見なくて良いことに、少しだけホッとする。
 どんな顔をして、悠理を見たらいいのか、私にはわからない。
 だって、悠理からの告白にあんな態度を取っちゃったからなぁ‥‥‥。

 「い、今、なんて‥‥‥」
 悠理からの告白に驚いた自分もいたけど、それ以上にあの日のことがフラッシュバックした。
 『真紘くんって、なんか思っていたのと違うね‥‥‥』
 『やーい、最低なおとこおんな!』
 違う、違う違う違う。
 「‥‥‥真紘?」
 『あーあ!泣かせた!』
 うるさいうるさいうるさい。
 「真紘、どうしたの?」
 「‥‥‥ごめん、出て行って」
 「は?」
 私の言葉は冷たくて、震えてた。
 「出て行って!」
 「え、真紘‥‥‥!?」
 そう言って、私は告白の返事もせずに悠理を追い出したんだ。

 我ながら、最低だよな‥‥‥。
 完全な八つ当たりだし。
 自己嫌悪に陥る。
 さすがに、悠理もあれで私のことを嫌いになっただろう。
 その事に、何故か胸がズキズキ痛む。
 「はい、悠理もお疲れ」
 「ねむ‥‥‥」
 その声で現実に引き戻される。
 なんとなく、声のほうを見る。
 すると、悠理とバッチリ目があってしまった。
 反射的にバッと顔を背ける。
 悠理も、そのまま私に声をかけることなく寝室に入っていってしまった。
 ‥‥‥声かけてくれたら良かったのにって、わがままだよね。
 悠理から目をそらしたくせに、声をかけて欲しいなんて思ってしまっている自分は、本当に身勝手だ。


 「で、真紘!それからどうしたの!?」
 「どうって‥‥‥別にどうもしてないけど」
 「ええ〜〜〜!」
 時は流れ翌日。
 ただいま放課後。
 学校で私の姿を見た日葵は『なんで元気ないの!?悩みでもあるの!?』と騒ぎ半ば強引に私を近くのカフェに連れてきた。
 日葵の勢いに流されてしまった私は、日葵が合宿のとき、私の部屋から出て行った後のことを全て話した。
 さすがに悠理から告白されたことを伝えたら驚いていたけど。
 日葵は一人で考え込んでる。
 珍しく真剣に考えている彼女の表情がなんだか面白くて思わず笑ってしまった。