「そんな険しい顔は、可愛い貴方達には似合いませんよ?」
 私は、日葵から離れて睨んでくる女子達のもとへ行き、そう言った。
 おえ、口が腐る。
 我慢我慢。
 「「「そっ、そうだよね!!」」」
 私が来たことに驚いたのか、若干焦りながらも彼女達は声を揃えた。
 調子の良い人達。
 私は彼女たちに背を向けて、日葵のもとへ向かう。
 「真紘、かっこよかったよ!」
 「大したことはしてないよ」
 後ろからは、黄色い歓声が聞こえてくる。
 と同時に、急に目の前が影になった。
 「なあ」
 「‥‥‥なんでしょう?」
 私の前には、大柄な男子が立っていた。
 王子の仮面を貼りつけて、その男を見上げる。
 「お前、調子乗んなよ。女子にちやほやされるからって」
 「‥‥‥乗ってませんよ」
 妬み嫉みが凄い。
 私に嫉妬してる暇があったら、少しでも自分磨きに勤しめば良いのに。
 それでも、イラつきは表情には出さない。
 まだ笑っている私にイラついたのか、その男子は私の胸ぐらを乱暴に掴んで、私を立たせた。
 女子からは、小さく悲鳴があがる。
 「真紘!」
 「大丈夫」
 日葵が焦ったような声をあげる。
 「まだ余裕なんだな」
 「焦るほどのことでもないので」
 「‥‥‥合宿、覚悟しとけよ」
 そんな捨て台詞を吐いて、その男子は去っていった。
 というか、こんな状況に担任は何をしているんだ?
 ‥‥‥寝てるし。
 適当な担任に脱力する。
 それにしても、合宿、覚悟しとけってどんな脅しよ。
 まあ、あまり気にしないでおこう。
 「男子、決まった?」
 私がいつもの調子で話すと、日葵もいつもの調子で返した。
 「ううん、まだ。なんか、誰が真紘と一緒になるかでジャンケンしてる」
 ガクッ。
 そんな漫画みたいな音でこけそうになった。
 男子たちは私じゃなくて、日葵、アンタと一緒になりたいんだよ‥‥‥!!
 大声で目の前の無自覚美少女に言ってやりたい。
 それに、男子も男子だ。
 命知らずすぎる。
 もし何か日葵に変なことをしようとしたら駿樹さんに冗談抜きで殺されるだろう。
 一応、か弱くて、無自覚なお姫様を守るナイトになりますか。
 私はそう心に決めた。

 そしてやって来た合宿当日。
 バスを降りるとそこは、「the 合宿場」な建物だった。
 日葵はずっとはしゃいでる。
 「楽しみだね!」
 「‥‥‥そうだね」