「私、誘う人なんていないし」
 女子を誘えばいくらでも来るだろうけど。
 それじゃ、多分勉強にならない。
 「いるじゃん!」
 誰?
 私は日葵が誰のことを言ってるのか見当もつかなくて、首をかしげる。
 「瀬戸悠理だよ!」
 「はぁ!?」
 日葵の口から、思わぬ人物の名前が出てきて、私は思わず大声を出す。
 「一緒にモデルの仕事してるんでしょ!誘えば来てくれるんじゃないの?」
 「う~ん、どうだろう・・・」
 誘っても「眠い」って返事が返ってきそう。
 そもそも誘わないけど。
 「それ以前に、日葵と同じ空間に他の男を連れてきたら、私が逆に駿樹さんに怒られそうなんだよなぁ・・・」
 「どうして?」
 どうしてって、日葵鈍すぎるでしょ!
 自分がどれだけ駿樹さんに溺愛されてるか、わからないの!?
 委員会のこととかで日葵に男子が話しかけたのを目撃したぐらいで、嫉妬と独占欲で不機嫌になるんだよ!?
 この無自覚め!
 「お願い!仲直り、協力して!」
 「でも・・・」
 「いいよ、勉強会参加しても」
 『やっぱり無理』と言おうとした私を遮って、聞いたことのある声が聞こえた。
 この声は・・・。
 「なんで気配消すのよ・・・」
 「消してるつもりはないけど」
 いや、消してるでしょ!
 心の中で悠理にツッコミをいれる。
 「本当!?瀬戸くん、いいの!?」
 「うん」
 「良くない良くない良くない!」
 「ありがとう!」
 「こら日葵!話を聞け!」
 「別にいいよ。場所ってどこ?」
 「悠理も止まれ!」
 二人だけで話を進めるな!
 「真紘の家のつもりだよ」
 「どうして!?」
 「だって中間のときもそうだったじゃん」
 前と今では状況が違いすぎる!
 それに私はまだ許可していない!
 「ダメ?」
 ウルウルウルウル。
 そんな目で日葵は私を見る。
 「お願い・・・」
 うう、駄目だ駄目だ。
 ・・・断れないっ!!!
 「いいよ・・・」
 「やったぁ!真紘大好き!本当にありがとう!じゃあ、今週の日曜日に真紘の家ね!」
 「俺、真紘の家知らないんだけど」
 「あ、そっか。なら学校の最寄りの駅で集合は?あそこけっこう真紘の家に近いよね!」
 「OK」
 「・・・・・・」
 「ねえ真紘、駿樹誘っといてくれる?私から誘いにくくって・・・」
 「わかりました~・・・」
 親友のためだもん、仕方がないよね・・・。