そう言われて私は今度こそかたまる。
 忘れてた‥‥‥!
 連音さんとか、龍羽とかその他の人に私の素を見られるのは別にいいからって油断してた。
 同じ学校の瀬戸悠理には私の素を知られてはいけない。
 だって、学校では私は「王子様」で通っているから。
 瀬戸悠理に私の素でも広められたら大変だ。
 ‥‥‥痛恨のミスだ。
 二回目はさすがに誤魔化しきれない。
 そう判断した私は、瀬戸悠理に本当のことを話すことにした。

 「つまり、学校では王子様の仮面をかぶって生活していると」
 「‥‥‥はい」
 私が全て話し終えると、瀬戸悠理が今までの話をまとめるように言った。
 私は、王子の仮面をかぶっている理由までは言わなかった。
 瀬戸悠理は無表情のまま。
 「やっぱり」
 そう呟く声が聞こえた。
 「え‥‥‥やっぱりって‥‥‥」
 「だって俺、振ってビンタされた直後の荒れてる真紘見たもん」
 「え‥‥‥!」
 それ、一番やばいところじゃないの!?
 迂闊だった‥‥‥まさか見られてたなんて。
 「咆哮しながら校舎の壁殴ってたよね」
 「それを言わないで!‥‥‥ねえ、瀬戸悠理」
 「何」
 私は瀬戸悠理にガバッと頭を下げた。
 「私の素を、学校でばらさないでほしい」
 本当にバラされたら終わる。
 『真紘くんって、思ってたのと違うんだね‥‥‥』
 その言葉が頭に蘇る。
 「別にいいけど」
 「本当!?」
 瀬戸悠理の言葉で、バッと顔をあげる。
 「うん。さっきのご褒美、守ってくれたら」
 「は‥‥‥?」
 さっきのご褒美って、瀬戸悠理以外の人と喋るなってやつだよね?
 誰が得するのかわからないご褒美。
 「本当にそれは無理だって。生きていくには、瀬戸悠理だけと喋っとくわけにはいかないし」
 そこまで言うと、瀬戸悠理は無表情を少し崩して不満そうな顔になった。
 「え〜‥‥‥なら」
 「何?」
 良かった、さっきのご褒美は諦めてくれた。
 「俺のこと、龍羽みたいに下の名前で呼んでよ」
 うん、また想像の斜め上。
 「意味わかんないんだけど」
 「そのままの意味だよ」
 まあ、さっきのご褒美よりかはマシか。
 本当に誰得なのかわからないんだけど。
 「悠理」
 「そう、それで呼んで」
 「‥‥‥学校で会ったときも?」
 「うん」
 それで呼んだら女子に睨まれそうなんだけど。
 でも、助けてもらったのは事実だもんね。