「真紘!さっきすげー良かったぞ!」
 「ありがとう」
 そう龍羽に直球で褒められてくすぐったい気持ちになる。
 「龍羽、さっきは応援してくれてありがとね」
 「おう!」
 私がそうお礼を言うと龍羽もニカッと笑う。
 龍羽は本当に良い人だ。
 その後も二人で話していると。
 ーグイッ。
 「え!」
 そう後ろから誰かに引っ張られた。
 そのまま少し甘い匂いに包まれる。
 「え‥‥‥?」
 「何してんだよ悠理」
 その龍羽の一言で、私を抱き寄せたのが瀬戸悠理だと知る。
 いや、本当に何してんの。
 私が瀬戸悠理を理解する日は遠そう‥‥‥じゃなくて!
 「離してよ」
 「ヤダ」
 ヤダじゃない!
 龍羽もポカン、としてるじゃん。
 「離して」
 さっきより強めの口調で言う。
 「‥‥‥‥‥‥」
 瀬戸悠理はそれには答えず、呆けている龍羽を置いたまま、ズルズルと私を引っ張って奥の寝室に入っていった。

 「ねえ、本当に何してるの」
 寝室に入ったら、私は瀬戸悠理に問うた。
 「瀬戸悠理、離して」
 さっきから、視線が痛かったんだからね。
 私が間抜けにもズルズル引っ張られていくところは、当然人にも見られてて。
 香くん、千晴くん、一さん、龍羽、そして用事が終わってここに来たらしい棗さんの視線がずっと突き刺さってた。
 「ねえ、真紘」
 「何」
 「俺に、なにも言うことないの?」
 そういう瀬戸悠理の表情からは、今瀬戸悠理が何を思っているのか掴み取ることが難しい。
 「あ、さっきはありがとう。瀬戸悠理のおかげで、撮影を終えれたから。本当にありがとう」
 これは、めんどくさくなったとかじゃなくて、心からのお礼。
 本当に助かったから。
 「俺、頑張ったよ」
 「だから、ありがとうって‥‥‥」
 「ご褒美ちょうだい」
 「‥‥‥え」
 私の言葉に被せるようにして言われたその言葉にフリーズする。
 「ご褒美って‥‥‥?」
 「俺以外の人間と喋らないで」
 「は?」
 それが、ご褒美?
 意味不明なんだが。
 「俺とだけ喋ってて」
 「それは‥‥‥無理だよ」
 生きていく上で瀬戸悠理とだけ喋るとか。
 不可能だ。
 「え〜‥‥‥」
 「え〜じゃない!早く私を解放しろ!」
 「それもヤダ」
 「なんでもヤダじゃん!」
 わがまますぎる。
 「というか、いつもの王子キャラはどうしたの?」