「ねぇねぇ聞いた!?」
 「嘘でしょ・・・」
 「本当なのかな?」
 「なんでも、悠理くんが他の子の告白に乱入して・・・」
 「私もその噂聞いたよ!」
 私と悠理が付き合っているっていう話は学校中に広まるのに一日もかからなかった。
 体育館の舞台であんなに目立つことしちゃったからね・・・。
 おかげで、いつもよりみんなに注目されている気がする。
 みんなの視線に込められた感情も様々だ。
 好奇、戸惑い、祝福、驚き、喜び、嫉妬。
 いろんな視線が廊下を歩いている私の体に突き刺さる。
 男子からは女子にモテる二人がくっついたことに対する喜び。
 そして、一部の女子からは鋭く睨まれている。
 なるべく反応せずに教室に向かって急ぐ。

 ―――ガラガラガラッ。
 教室の扉を開けると、教室の中にいた生徒全員が私の方を向く。
 その一人に、歩夢くんもいた。
 私は視線のことは気にせず、まっすぐ歩夢くんのところへ向かう。
 「歩夢くん」
 「ど、どうしたんですか?真紘さん」
 歩夢くんは近づいてきた私に驚いたように、目をまん丸に見開いている。
 その目は、微かに赤い。
 「昨日は、その、ごめんね」
 「いいんです」
 ふるふると、悲しそうな笑顔で歩夢くんは頭を振った。
 「振られることはわかっていたんですから。僕は、真紘さんに自分の気持を伝えられただけで十分です。こちらこそ変に気を使わせてしまって、迷惑をかけてごめんなさい。僕のせいで、真紘さんと瀬戸くんが付き合ってることもバレてしまったし」
 「迷惑だなんて、そんな。ずっと隠せることでもないんだから、いつかこうなることはわかっていたしね。歩夢くんのせいじゃないよ。それに、歩夢くんの気持ちは嬉しかった。・・・その気持ちに応えることはできないけど」
 「そう言って貰えただけで、報われました」
 歩夢くんは嬉しそうに、でもどこか辛そうにはにかんだ。
 「さあ、文化祭二日目も頑張りましょう」
 「そうだね」

 「悠理、焼きそばいる?」
 「ん〜・・・」
 「クレープは?」
 「ん〜・・・」
 隣に立っている悠理からはまともな返事が帰ってこない。
 二日目のぶんのシフトも終わらせ、今私は悠理と文化祭を回っている。
 いわゆる、文化祭デートってやつだ。
 相変わらず悠理は眠たそうだけどね。
 私は、模擬店で買ったイチゴのクレープにかじりつく。