自分の部屋に戻って、この屋敷を出る準備をする。買ってもらったガラスペンのセット、ノートと辞書をカバンに詰めようとして思い立つ。
 買ってもらったノートの一部を切り取って、そこへ菫色のインクで文字を綴る。

― 誕生日おめでとう。貴女の新しい未来が幸せでありますように ―

 初めて書いた手紙。一生無縁だと思っていたもの。まさかこんな形で書くことになるなんて、自分がおかしくて笑ったら、ポロリと瞳から涙が落ちた。