朝が来た。
 繋がれた手のひら。裏返してみれば、イザベラの手の甲には聖女の印はなかった。

 終わったのだ。終わってしまった。

 オレはホッとして、悲しくなって、ベッドから抜け出そうとした。

「……ジャン……?」

 イザベラがオレを呼んだ。眠そうな顔だ。それすらも愛おしい。髪を梳いてやれば、満足そうに微笑んだ。
 目じりが桜色に色付いている。そんなふうにしたのはオレのせい。わかっているから愛おしくて、だからこそ切なくなる。

 好きです。

 言葉にしないで微笑めば、イザベラは大人びた顔で笑い返した。

「もうこれで、あなたは自由よ。解放されたわ」