「マルチェロと結婚なさい。セシリオの後見人に二人でなれば良いわ。それが一番いい道だと貴女だってわかるでしょう?」

 イザベラは俯いた。

「伯母様のお考えはよくわかります。しかし、……マルチェロ様にはさぞやご迷惑なことでしょう」
「あの子は関わりかたがネジ曲がっているだけで、貴女のことが好きよ。未だに腰を落ち着けられないくらいにはね。迷惑どころか喜ぶでしょう」

 イザベラは困ったようにオレを見た。

「奴隷のことは聞いています。でも、イザベラ、貴女のことです。使えてなどいないのでしょう?」
「そんなこと!」

 夫人は小さく笑う。

「もし使えていたとしても、それは些末な問題よ。イザベラ。悪いようにはしないわ。あのバカ息子にはよく言って聞かせるし、私が貴女の一番の味方になります。ただ、聖女の印についてだけは、どうか我慢なさい。バカ息子が嫌なら嫌でいいわ。その子がいいならそれでもいいのよ。交合っておしまいなさい」

 イザベラは困ってしまって体を小さくするばかりだ。

「そしてその奴隷を解放してあげて」

 その言葉に、イザベラは顔を上げた。驚いたように目を見開いてオレを見た。
 唇が小さく『解放』と呟く。悲痛な顔で、もう一度『解放』と呟いた。