明るい日差しのはいる応接間にシニョリーア伯爵夫人がいた。
 イザベラへの視線は穏やかだが、オレにはあからさまな嫌悪を向ける。まるで、昔のセバスチャンのようだ。

 たわいもない昔話で場が温まった頃、夫人が貴族の顔で微笑んだ。

「イザベラに大切な話があります。人払いを」

 そう言って、オレを見た。さがれと言う意味だ。
 イザベラは喉をひきつらせた。

「……こ、ここ、には、人などおりません、わ。伯母様」

 自分で口にしながら不本意なのだろう、イザベラはギュッとスカートを握り締める。
 シニョリーア伯爵夫人はため息を吐き出した。

「貴女は本当に不器用で困ったものね」

 イザベラはビクリと体を縮こまらせた。

「うちの馬鹿息子(マルチェロ)のせいだともわかっています」

 シニョリーア伯爵夫人は苦笑いした。

「そして、私もバカ親なのよ。ごめんなさいね。イザベラ」

 夫人は頭を下げてから、イザベラを見据えた。