「他に方法は無いんですか。なんで貴女ばっかり犠牲にならないといけない」

 この人が夢を諦めなくて済む方法。
 夢のために守ってきたものを奪われ、夢も諦め、そしてセシリオが成人すれば守ってきた家から捨てられる。

 搾取されて搾取されて、最後には捨てられて、いくら身分がよくたって、こんなのは奴隷と変わらない。
 自由なんて、彼女にはもともと無いじゃないか。貴族なんていったって、ただ裕福な奴隷だ。

「犠牲じゃないわ、最善を選んでる」
「それは貴女の最善じゃない、選ばされてるだけだ」

 イザベラは小さく首をふる。

「私がセシリオの側にいたいの。それがたった十年しかないとしても、その十年は何にも代えられない。だから、それでいいのよ」

 オレはギュッと拳を握った。自分の未来を投げ捨てて、それでも側にいたいと思われるセシリオが羨ましかった。
 親も知らないオレは、そんなの理解できない。