「ああ、賢い君のことだ。当然わかっているだろう。そんな奴隷を連れて歩いて女主人を気取るより、きちんと結婚すべきだと」
マルチェロは笑った。
「君がその犬を捨て、僕にきちんと謝罪できたら、僕は君の過ちを赦してあげる」
オレはマルチェロの顔を押しやった。
「我が主人は過ちなどありません。失礼します」
イザベラの腰を抱いて、マルチェロに背を向けた。
「いい気になっているお前に教えてやるよ、『ジャン』それはリッツォ伯爵家で昔飼ってた犬の名前だ!」
背中から撃ち抜かれるような言葉に振り返りそうになる。グッと唇を噛みしめて、イザベラの背を押した。