「本当にお前は躾がなってないな。僕はイザベラと話しているんだよ」
イザベラはうつむいたままだ。マルチェロはその顔をしたから覗き込むようにして顔を近づける。
「ねぇ? イザベラ、もしかして躾けられてるのは君の方じゃないよね」
ギラギラとした瞳、息の上がった声、まるで獣のようだ。
「『ジャン』といったっけ? コイツの評判はすこぶる悪い。かかわった女はみんな身を持ち崩すそうだ。君がそんなものに溺れる女だとは思っていなかったが、まぁ、今回だけは大目に見てあげるよ。叔父様の不幸もあるしね、君が血迷っても仕方なかったさ、でも、目を覚ませ」
イザベラの首筋に嚙つかんばかりの距離で、マルチェロが続ける。
「セシリオは知っているのかい? 君が性奴隷なんかを飼っているってことを。あの家はセシリオのものだろう? 君が食いつぶしていいものじゃない」
「わかっています」
イザベラが絞り出すように答えた。声が震えている。