逃げられない招待状がやって来た。
 王宮からの舞踏会の案内状である。賢者となったという叔父からも、必ず来るようにと念押しされてしまったようだ。
 セバスチャンはそれをイザベラに伝えると、大きくため息をついた。

「……仕方がないわね」

 イザベラは真っ白な顔をもっと蒼白にして絞り出すように言った。

「何時かは逃げられないと思っていました。準備をしてください」

 断頭台に向かう罪人のような顔つきのイザベラを、不憫に思ったのだろう、使用人たちがザワザワと騒めく。

「ドレスを作りましょう」

 ざわめきを断つようにオレは声を上げる。少しでも空気を和らげたい。

「ご主人様をとびっきり綺麗にするドレスを」
「ジャン、お前が中心になって見立てなさい」

 セバスチャンが命じた。イザベラはまだ戸惑っているようだった。

「そして、お前の分の服も一緒に仕立ておくように」

 暗に一緒に行くことを命じられる。オレは思わず嬉々として頷いた。