その日の夜。オレはイザベラの部屋へ向かった。
イザベラは三人掛けのソファーでランプの明かりをもとに、今日買った本を読んでいるようだった。オレはその隣にそっと腰掛ける。
「面白いですか?」
オレを認めて顔を上げる。もう突然の来訪に驚かなくなっていた。その警戒心のない姿に、内心苦笑する。
「ええ! とっても! こちらの国よりとても天文学が進んでいるの。お互いに周りあう星があるんですって! 恋人の星と呼ばれていた星を観察していたらわかったそうよ。大空を光りながらダンスを踊っているようね」
イザベラは、興奮したように話す。オレはポカンとしてしまった。
イザベラはそれに気が付いて気まずそうにした。
「興味、ないわよね」
「オレは本が読めませんから」
「だったら、私が読んであげるわ。これから毎晩いらっしゃい。指環と剣の物語は、どなたかと舞台で見たことあるかしら? 本で読んでも面白いのよ」
まるでセシリオに言うように笑いかける。他の誰かと舞台を見ても気にならないあたり、性奴隷どころか、男とすら思われていないらしい。
性奴隷に毎晩部屋に来いと誘うことが、どういう意味か自覚していない。
それが何だかムカついて、早急な言葉になる。
「今日のあの失礼な人はなんですか?」
単刀直入に聞く。イザベラは顔を曇らせて、本に目を向けた。