イザベラはセシリオの横へ並んでインク壺を選び出した。
 荷物を包んで馬車へ届けてもらうことにして、百科物屋を後にした。
 次は本屋へ向かうのだ。百科物屋の店主から、本屋に新しい本が入ったと聞かされたからだ。本屋が屋敷に来るのは一週間ほど先で、それがイザベラには待てないらしかった。

 本屋に行けば、店主が笑顔で迎えてくれる。

「セシリオも好きな本を見てらっしゃい」

 イザベラが声をかければ、本屋の娘がセシリオを案内していった。

「こちらです」

 本屋の主人が新しい本をイザベラに見せる。

「『ワグナー国天文要覧』が出たのね!」
「はい。店頭には明日並びますが、イザベラ様には特別に」
「ありがとう!」

 満面の笑みで本を抱きしめるイザベラは、乙女の様に可愛らしい。

「関連書籍はこちらの棚になります」

 店主はイザベラを案内すると、スッと下がった。イザベラは周りの様子も気にならないほど集中して、本棚をあさっている。
 こんなに本が好きなのに、なぜ今まで本屋へ出向かなかったのか不思議なくらいだ。