「だったら教えてあげるわ。ノートも買いましょう。字が書けないなら、絵でもいいわ。使わなくたっていいのよ。美しいでしょう?」
初めて向けられた笑顔に、ドギマギと心臓が早鐘を打った。頭が上手く回らない。スマートなセリフ、女が喜ぶ返し方、そんな考えなくても口先からスラスラ出て来たのに、今は唇が震えるだけだ。
「叔母さま! 僕も!」
セシリオが強請る。
「いいわよ。好きな色のインクを選びなさい」
「ありがとう」
「イニシャルを彫ってもらいましょうか?」
「うん!」
セシリオがインクを選びに行く。
「ジャンも好きなインクを選びなさい。イニシャルはJでいいかしら」
イザベラが屈託なく笑った。