「屋敷に持ち込めないと言っていたものを見たいわ」
「ならこちらです」
店の主人とイザベラ、セシリオは楽しそうに一画で語り合っている。
なにもわからないオレは、店の品物をまじまじと見ていた。土に埋まった大きな骨は何なのだろう。たくさんの歯車がサイズ別に分けられて詰まっている引き出し。色々な厚みの紙やインク。
透明のガラスペンが綺麗で日に透かして見てみる。イザベラが持っているものと同じものだ。
「気に入ったのなら買ってあげましょう」
突然背中から声がかかって驚いた。イザベラだった。いつになくごきげんだ。
「いや、字が書けないのでいりません」
ペンなど買っても綴りが書けない。記号としての字はわかるが、文を綴ることはできない。わかるのは一般的な名前くらいだ。
書けたとしても、手紙を書く相手なんかいない。