「素敵ね。では緑色にしましょう。名前を入れてくれる?」

 イザベラが言えば、百科物屋の店主はコクリと頷いた。

「僕のだ! 名前は白がいい!」

 セシリオが嬉しそうに笑うけれど、どう見ても七つの子供が欲しがるようなものには見えなかった。

「何ですか?」

 思わず問いかける。

「工具箱よ」
「……工具箱……」

 不思議に思えば、店主は笑った。

「アンタが不思議に思うのは無理もない。工具箱をこの年で買っていくのは伯爵家ぐらいなもんさ。代々リッツォ伯爵家は勤勉家で実験やら研究やら、そう言ったことが好きなお家柄らしい。しっかりセシリオ様にも同じ血が流れているようだ」

 まるで自分の孫でも自慢するように笑う。

 オレはイザベラを見た。

「そう言うことよ。リッツォ家は変人貴族と言われているの。現に叔父様は賢者として宮廷で働いているわ」

 変人貴族、だんなて言いながらも、その言葉は自慢げだった。

「新しいものも入っていますよ」

 店主がイザベラに話しかける。