セシリオはイザベラの街行き姿をそれは盛大に褒めちぎった。それはそうだろう。初めのころのイザベラに比べれば、ペンペン草と菫ほどの違いがある。
 男だったら必ず褒めるはずだ。

 気分を良くしたイザベラは馬車に乗って町へ出かけた。オレもそれに付いていく。イザベラはセシリオにオレのことをなんと伝えているのだろうか、と不意に思った。セシリオはオレに話しかけることはない。

 久々に出た街は、にぎやかで明るくて懐かしい匂いに満ちていた。
 セシリオの目当ての店についた。看板には百科物屋と書いてある。窓際には天球儀が見えた。まるで、イザベラの寝室のようだ。
 セシリオは店につくなり駆け込んでいった。カランカランとドアのベルが鳴る。イザベラもそれに続く。

 薄暗い店の中は、武骨なものがいっぱいだった。時計、イザベラの寝室にもあった液体の入った長い筒にカラフルな丸いカラスが浮き沈みしているもの。ブリキの四角い胴乱、ビーカーにフラスコ、何かわからないけれどネジや歯車。
 セシリオは目をキラキラさせている。
 その様子をイザベラが微笑ましく見守っている。