イザベラはそれを見て目を見張った。初めて着るペパーミントグリーンのワンピース。怖気づいたように鏡の中の目を泳がせた。
 メイドたちは気が付かないふりをして、準備を進める。
 
「ねぇ、これは少し派手ではないかしら?」
「いいえ、お似合いです」

 メイドたちはきっぱりと答える。

「本当によく似合っていますよ、ご主人様」

 自信なさげなイザベラの後ろに立って、声をかければギっと睨まれた。
 セシリオとはずいぶんな態度の違いだ。

「またあなたが選んだの」
「そうです」
「どうしてこんな!」
「ご主人様に着て欲しかったからです」
「私に恥をかかせる気?」
「オレが選んだ服が似合わなかったことがありますか?」
「!」
「セシリオ様は毎回可愛いとほめてくれるではありませんか」
「……でも、セシリオは、気を使って……」
「七つの子がそんな気を使うんですか? ご貴族様は」
「っ!」

 少し最後がトゲトゲしかったかもしれない。
 しかしイラついたのだ。俺が何度言っても拒絶するくせに、セシリオに言われればお世辞だと思いながらも喜ぶ、そんなのがムカついた。
 オレだって何度も何度も言っているのだ。それなのに、嘘だと決めつけられる。絶対に信じない。