「もう夕方か、、、」





一人でいる空間に耐えかねた俺はなんとなく思ったことをポツリとつぶやいていた。









「あなたには何が見えますか?」








突然聞こえた声に振り返ってみるといつのまにか一人の女の子がいた。





綺麗に伸びた黒髪に色白の肌、まるで人形の様とはよく言ったもので、その言葉がとても似合う美少女だった。






「…俺に言ってるのか?」





「他に誰か居ますか?」





「いや、居ないけどさ…見えるのは普通に外の景色だよ」





「そうですか、でも私にはそれも見えません」





「そりゃあ、あんたが車椅子に座ってるからだろ?」





「クスッ、そうかもしれませんね」





少女はクスリと笑いながらそう言った。




車椅子に座っている彼女からこの窓の外が見えないのは当然のことだろうに変なことを言う子だ、もしかしたら外に出られないのか?




だとしたら悪いことを言ってしまったかもしれない。





「一体、何が言いたいんだ?」





突然話しかけてきた少女に動揺した俺は思わず少女に尋ねていた。





「あなたにも分かる日が来ます」





「教えてくれないのか?」





「秘密です」クスッ





「なんだよそれ」ハハッ





「それで、外の景色は綺麗ですか?」





「ん?別に普通だよ、なんて事はない夕焼け空に、見慣れた街、特別なものは感じないな」





「そうですか…それはきっと美しい世界なんでしょうね。」





「本当に何が言いたいんだ?というか君は誰?」





「私ですか?私は…」





「山本さーん、そろそろ時間ですよ~」





「あら?ごめんなさい時間みたい、私は自分の病室に戻ります」





「…あぁ、気をつけて」





そう言い残すと彼女は俺に背を向け看護師さんに車椅子を押され、病室がある方へ帰っていった。




彼女は一体何者だったんだろう…名前は確か山本さん、看護師さんがそう呼んでいた。




俺が思い出せない昔の知り合いという訳でもないはずだが、なんでいきなり話しかけてきたんだろうか。





「なんだったんだ一体」





考えても仕方ないか、そろそろ俺も自分の部屋に戻るとしよう、もしかしたら家族の誰かが来ているかもしれない。






そして俺は彼女と反対の廊下に向かって歩きだした。