「じ、実は……、先のことが見通せる人……予言? そう予言者に会ったの」

 なるべく事実から離れないように、慎重に言葉を選ぶ。ローレンは、小説を読んでこの世界に起こるほぼすべてのことを知っているんだから、間違いにはならないだろう。

「胡散臭いな。誰だ」

「内緒。未来が見通せるなんて知られたら、その人がどんな目に遭うか分からないでしょう?」

「でもその情報が本当かどうか、どうやって判断するんだい? リンネ。少なくとも僕は信用できないよ?」

 神妙な顔で語るクロードは間違っていない。誰の発言かもわからないのに、信用などできるわけがない。

「それは……そうだけど」

 私が困っていると、レオがずずいと顔を近づけてくる。

「男か?」

「……え?」

「おまえが庇っているのは男かと聞いている」

「ううん。女の子」

「そうか、ならいい」

 レオはそう言うと、二の腕のあたりを軽く叩く。

「そいつは、この文字のことをなんと言っていたんだ?」

「レオ」

 クロードが咎めるような声を出したが、レオは気にした様子がない。

「いいんだ。俺はリンネを信用している。リンネが大丈夫だというなら、信用する」

「……そう。僕が何を言っても、聞く気はなさそうだね」

 呆れたようにクロードがつぶやく。なんだか険悪なムードに申し訳なくなってしまう。ふたりをケンカさせたいわけじゃなかったのに。
 機嫌をうかがうような私の視線に気づいたのか、クロードはいつもの優しい顔に戻って、諭すように言った。