「それは、えっと、ほら、古代語? そう!古代語のこと調べていて」
「我が国の図書館に、魔術や古代語に関するものはないよ。僕だって手に入れるのにどれだけ苦労したことか。そうやって入手したものも、王城の地下にある秘匿書庫に保管している。リンネがそこに入れたとは思えないな」
たしかに、ハルティーリアに魔術を扱う人間はいない。魔術は隣国でしか発展してないって言ってたっけ。ああ、本当にうっかりだ。万事休す。
「えっと、だから、その……」
目をクルクルさせながら、必死で無い知恵を絞りだそうとしていると、クロードから呆れたような深いため息が落とされた。
「……リンネ、本当のことを言うんだ。君はいったいどこでそんな情報を手に入れたんだ?」
優しい調子ではあるけれど、まなざしは鋭い。
どうしよう。怒ってる? でも、言い方を間違えたら、ローレンが罰せられちゃうかもしれない。
「誰かかばっているのかい? だが、レオのことは国家秘密だ。魔法陣のことを知っているだけで十分不審人物なんだ。君に情報を与えた人物に悪意があったとしたら、君も一緒に罰せられるんだよ? 分かっているのかい?」
そんなことを言われても! 言ったって信じてくれないでしょう? この世界が小説なんですよとか。私だっていまいち信じきれてないもの!