クロードの顔に少し疲れが見える。

「調べてくれるのは助かるが、ちゃんと寝ないとクロードが倒れるぞ」

「分かってるよ。つい、夢中になってしまっただけだ」

 そんな風にクロードはずっとそばで支えてくれた。こちらが、申し訳なくなるほどだ。

「で、どうして起きたの? なにかあったのかい?」

「少し痛みがあって」

「痛み? ちょっと見せてくれる?」

 促されたまま、袖を捲りあげて腕を見せた。クロードもすぐに、呪文から伸びた線に気が付く。

「どうしたんだい、これ」

「分からない。さっき確認してみたら伸びていた。風呂に入ったときは気づかなかったから、さっき傷んだときに伸びたんじゃないかと思うんだが」

「……まるで呪文が生きているようだね。よく見てレオ、この線、細かな文字で書かれている」

 明かりを近づけてじっくり見れば、たしかに線は細かな文字が並んでできたものだ。

「気持ち悪いな」

「やっぱりもっと上級書を調べないと駄目だね。この呪文は成長して新たな効果を引き出すのかもしれない」

 クロードが疲れたようにため息を着く。
 たしかに頭の痛くなるような変化だ。

 現在、俺の体に出ている不調といえば、女に触れないことくらいだが、これ以外にも何か起こるというのだろうか。これ以上のこととはなんだ。人間全員に触れなくなるのか。それとも、命を脅かされるのか。

 無意識に身震いをしていたらしい。クロードが心配そうに俺を見ている。

 学園を卒業し、執務にあたるようになったクロードは、魔術研究のチームを立ち上げた。ごく少数のメンバーで構成されているそうだが、人数が少ない分、機密保持が楽になったようで、クロードいわく、ひとりで調べていたときよりずっとはかどるようになったらしい。