鳥のさえずりが聞こえる。
 もう朝か、とのんきな気分で目を開けた私は、見える光景に驚いて目を疑った。
 太陽は中天にあり、あたりは花がいっぱいで蝶々まで飛んでいる。なんてのどかな……ではなく、目が覚めたのに外にいるってどういうことだ。

 起き上がろうとして、目に入ってきた自分の服装に驚く。
 なにこのひらひらの水色ドレス。私、こんな服持ってないはず。
 上半身を起こすと、肩からするりと金色の髪が胸元に流れた。……金髪? 待って、私は生粋の日本人だし、物心ついてから一度だって髪を伸ばしたことはない。

「ここ……どこ? なんでこんな……」

 おかしい。なにもかもがおかしい。声は甲高いし、手の色が陶器のように真っ白だ。
 私は黒のショートヘアで、肌は日焼けで小麦色だったはずだ。声は女子の中では低い方だったし、陸上部で短パンばかり履いていた。

 私は自分の胸元を見る。前から大きいとは言い難かったが、今は慰めようもないくらい平らだ。ぺったんこ。なけなしでもAカップはあったはずなのに!

「うそ。返して、胸っ。ああもう、なんかいろいろ返してー!」

 違和感に吐き気がするし、なんだかだるい。それでもここで途方に暮れていてもなにもならないのは分かる。

 起き上がってみると、視界もいつもより低い。花壇の花が腰位の高さだ。心を落ち着けようと深呼吸したとたん、頭がくらりとして、滝のように記憶が流れてきた。

 それは、金髪の女の子のものだ。ちょっとどんくさくて、わがままで愛されたがり。今日は父親にお城に連れられてきたのに、父が大人とばかり話していることに腹を立て、抜け出してきたところで転んだ。……これが、どうも直前の記憶らしい。

「……記憶がふたつある?」