クロードがエスコートしようと腕を差し出した。だけど、普通の大人と変わらない身長のクロードの腕に、八歳児としては小柄な私が手をかけようとすれば、身長差がありすぎて、ぶら下がるような感じになる。

 私が背伸びをしているのに気づいたのか、クロードはにっこり笑うと、少し腰を屈めて手をつないでくれた。
 あ、これなら楽だ。

「ありがとうございます」

「いいえ。かわいらしいお嬢さんをエスコートできて、光栄です」

 うーん、完璧な笑顔。お世辞もうまいし、さすが、公爵子息はそつがない。

 リンネの常識によると、貴族の中でも公爵というのは王に次ぐ位だったはずだ。伯爵はもっと下だったはずだから、クロードがリンネに対して下手に出る必要はない。……というのに、このへりくだった態度。紳士だなぁ。控えめなイケメンとか、出来すぎでは?

「レオ。リンネ嬢が来てくれたよ」

 いかにも偉い人が中にいそうな、豪華な装飾の扉を開けると、そこにレオの姿があった。昨日とは違って、ちゃんと貴族らしく、シルクっぽい光沢のあるシャツを着ていた。

「今日は布みたいな服じゃないんですね」

 思わず言ってしまったら、隣のクロードがふきだした。真っ赤になってレオが反論してくる。