「キャアッ」

 光はどんどん強くなり、やがて、視界が奪われる。
 周りにいた人も見えない。目の前にいたはずのレオでさえも。

「ギガッ」

 変な声が聞こえた。人間のものとは思えない、三音で構成された不協和音。

「なに……?」

 次の瞬間、光だらけだった空間を切り裂くように、黒い塊と銀色の鎌が目に飛び込んできた。

「……っ」

 声を出す暇もなかった。それは、私の胸めがけて振り下ろされた。
 あまりに急すぎて痛みも感じない。ただ、自分の体から血が噴き出すのを、私は目を見開いて見つめていた。

 黒い塊がはっきり私の目に飛び込んでくる。細い手足に全身黒づくめ。新月のような目と、口が怪しく光る。
 ああ悪魔って本当に要るんだ。本当に、ここは小説の世界なんだ。

 視界がかすみ、頭がもうろうとしてくる。レオが驚愕に目を見開いているのをなんとか確認した。

「レ……オ……?」

 私は、彼を救えなかったのだと悟ったのは、意識を失う直前だった。