とにかく誰かに助けを求めなきゃ、と立ち上がったとき、廊下の方からリンネが走ってくるのが見えた。
「ローレン、窓から見えたんだけど、そこでレオ、倒れてない?」
「リンネ! 助けて。レオ様が」
「やっぱりいるのね?」
リンネはものすごいダッシュで私たちの近くまでやってきた。そして、倒れているレオ様のシャツを容赦なく脱がすと、胸の魔法陣を確認する。私も確認して、愕然とした。私の予想よりもずっと進んでいる。
「なにこれ、もう完成間近じゃない。おかしいよ、小説では、ここまでなるのはレオ様の卒業のころなのに」
卒業まではまだ半年以上ある。いくらなんでも早すぎる。
レオ様との親密度もあげられてないし、私自身の力の発動もまだ。お母様がリトルウィック出身だと分かるエピソードだって、本当ならばこれからだ。
「……助けなきゃ」
オロオロしている私を横目に、リンネはきっと顔を上げる。
「ローレン、近くの男子生徒にタンカを持ってくるように言って。それと、王家の馬車を呼んで? ――レオを城に帰す。魔術のことはお医者様じゃ駄目よ。クロードに見てもらわないと」
リンネは瞳に涙を浮べながらも、しっかりとなすべきことを指示した。それでも動けない私を見て、落ち着かせるように手をギュッと握ってくれる。
「私が行ってくる。ローレンはレオを見てあげてて。でも触らないでね」
そのまま、すぐに走り出し、大声で人を呼び始めた。
その背中を見ながら、私は漠然と思ったのだ。
ここは『情念のサクリファイス』の世界かもしれないけれど、もはや私の知っている物語とは違う。
どう考えても、この物語の主人公は私じゃない。――ヒロインはリンネだ。
「ローレン、窓から見えたんだけど、そこでレオ、倒れてない?」
「リンネ! 助けて。レオ様が」
「やっぱりいるのね?」
リンネはものすごいダッシュで私たちの近くまでやってきた。そして、倒れているレオ様のシャツを容赦なく脱がすと、胸の魔法陣を確認する。私も確認して、愕然とした。私の予想よりもずっと進んでいる。
「なにこれ、もう完成間近じゃない。おかしいよ、小説では、ここまでなるのはレオ様の卒業のころなのに」
卒業まではまだ半年以上ある。いくらなんでも早すぎる。
レオ様との親密度もあげられてないし、私自身の力の発動もまだ。お母様がリトルウィック出身だと分かるエピソードだって、本当ならばこれからだ。
「……助けなきゃ」
オロオロしている私を横目に、リンネはきっと顔を上げる。
「ローレン、近くの男子生徒にタンカを持ってくるように言って。それと、王家の馬車を呼んで? ――レオを城に帰す。魔術のことはお医者様じゃ駄目よ。クロードに見てもらわないと」
リンネは瞳に涙を浮べながらも、しっかりとなすべきことを指示した。それでも動けない私を見て、落ち着かせるように手をギュッと握ってくれる。
「私が行ってくる。ローレンはレオを見てあげてて。でも触らないでね」
そのまま、すぐに走り出し、大声で人を呼び始めた。
その背中を見ながら、私は漠然と思ったのだ。
ここは『情念のサクリファイス』の世界かもしれないけれど、もはや私の知っている物語とは違う。
どう考えても、この物語の主人公は私じゃない。――ヒロインはリンネだ。