だから私にレオと仲良くなって、『一緒に学園に通いましょう!』と誘いだしてほしいのだそうだ。

 個人的には、引きこもっていたいならば引きこもらせていればいいではないかと思わないこともないが、この世界の常識では、父親の命令に逆らうことなど許されない。試しに逆らったらどんな反応をされるのか見てみたい欲求はあるけれど、保護者を怒らせていいことがなにもないのは、身に染みて知っているのでやらない。

 私は改めてレオとクロードの姿を思い出す。レオは私より背が低く小さく見えた。クロードは何歳なのかな。背が高くて大人びていたけれど、学園に通う年齢ではあるだろう。愛想がよく、優しそうだ。

 凛音はひとりっ子で、お兄ちゃんが欲しかった。だからクロードと仲良くなれるのはうれしい。

 問題はレオだ。いかにも構われたくないというオーラを出しまくっていたし、彼にとっては私など邪魔なだけの存在だろう。

 邪険にされる想像をすると、ため息が止まらない。
 ひとりでいたいならそれでもいいと思うんだけど、なんでダメなの? 王太子だから? 大人はどうして勝手に心配するのだろう。

 子供だってなにも考えていないわけじゃないのだ。こっちから頼るまで放っておいてくれてもいいのに。……まあ、心配されないよりはされた方がいいけれど。

「まあいいや、明日、明日」

 ベッドに足を投げ出して、私は目を閉じる。
 驚くほど急速に眠気が訪れ、そのままぐっすりと熟睡してしまった。

 夕食です、と呼びに来たメイドに起こされ、寝ぼけたまま夕食の席へとつくと、母親からは質問や叱責がたくさん飛んできたけれど、寝ぼけていたのでよく覚えていない。お小言は、多すぎると雑音にしか聞こえないのだ。