「なに言ってるの。私のことなんてどうだっていいよ! 私は、……私はただ、レオが生きていてさえくれれば、それでいいのに」

「そうだね。……リンネはお馬鹿さんだから、きっとその気持ちをなんって言うのか知らないんだよね?」

「え?」

「自分を犠牲にしても幸せになってほしいという気持ちはね。愛って言うんだよ。……リンネ、君は、レオを愛しているんだよ。身を引いてでも助けたいって思うくらい重症にね」

 涙が、ボロボロとこぼれた。 
 私がレオを好き? そんなわけない。だって私は悪役令嬢で、レオに嫌われなきゃならない立場なはずなのに。

「レオが愛する人と結ばれることで助かるというならば、助けられるのは君だけだよ」

 クロードはそういうけれど、私にはリトルウィックの巫女姫の血は入っていない。魔法など使えないのだ。どうやったって、レオを助けることなんてできない。
 それをうまく言葉にできずに、私は泣きながら首を横に振った。

「よく考えて、リンネ。レオが好きなら素直になりなさい」

「クロード」

「でないと、本当に僕が君をもらうよ? レオと婚約を解消するなら、僕にはそれができる。君の同意がなくとも、父君を味方につけて強行するのはたやすいことだ。だけど、それをしたらレオを傷つけることになる? それでもいいかい?」

 頭が混乱してよくわからない。それでも、レオを傷つけたいかと言われればそれだけは違うと言える。
 ぶんぶんと首を横に振ると、クロードはいつもの優しい顔に戻って笑った。

「ふふ、じゃあ、僕はおとなしく失恋してあげよう。……じゃあ次はレオを生かすことを考えようじゃないか」

「なにか方法があるの?」

「うん。だけど実験はできない、本番一発勝負の方法だ。そしてそれには、君の手が必要になる。どうかな、リンネ。やってみる気はある?」

「もちろん」

「じゃあ耳を貸して」

 そしてクロードが耳打ちした内容に、私は目が点になった。

「確かに、それは私が言ったんだけど」

「それを実行してみればいいと思うんだ、僕は」

そうして教えてくれた実行方法は、私には予想もつかないことだった。けれど、これならば確かに可能性はある、と思えるもので。

「クロード天才!」

 思い切り褒めたら、「だろ?」と口もとだけで笑われた。
 やっぱりクロードは頼りになる兄貴分なのだ。