そんなわけでふたりの姿を見たくなくて、授業が終わってからは速攻で屋敷へと帰る。
 気分転換にランニングしようとしたら、使用人やお母様に全力で止められた。

「リンネ、いい加減にそんな恰好で走るのはやめなさい。はしたない」

「はしたなくなんてないもん」

 ランニングと短パンだった前世に比べれば、長袖に乗馬ズボンで走っているのだから十分お上品にしているというのに、結局は母親の泣き落としに負けて自室に戻る羽目になる。
 レオだったら一緒に走ってくれるのに、と思うとまた悲しくなってしまうじゃないか。

 なんの楽しみもない。もはや、ふてくされてベッドに横になるくらいしかやることが無い。だったらせめて、自堕落を満喫してやるわ!

 思考が迷路に迷い込んだ挙句、私は令嬢にあるまじき態度でベッドの上をゴロゴロと転がった。

 それからしばらくして、急に屋敷が騒がしくなった。

「リンネ! お客様よ」

 メイドではなく母親に呼ばれて、私は驚いて立ち上がった。え、マジ? だらけていたから、髪とかぼさぼさになったんだけど。

「お嬢様、お早く。って、どうされたんですか、その髪!」

「ごめん、急いで直して」

「あああ、そこにおかけになってください。大変なんですよ。クロード・オールブライド子爵令息がお越しなんです」

 メイドは慌てたように言い、今はお母様が場を繋いでいるから、と教えてくれる。

「クロードが?」

 クロードは執務中だと思うのだけど。