それから、レオは私と距離を置くようになった。
 女の子が苦手だって知っているのに、無理やりローレンと仲良くさせようとしたから怒っているのかもしれない。

「今日は勉強会しないの?」

「レオの都合が合わないんだって」

 あれから欠かさず行われていた午後の勉強会も、ここ数日はレオの方から断られている。

「どうするのよ。私、レオ様がもう少し親密にならないと、助けられないわ」

「うーん」

 だけど、事情も説明せずにローレンを差し向けても、レオは嫌がるだけだろう。
 彼はあれで理性的なところがある。ローレンと親しくなる必要があると分かれば、ちゃんと協力してくれるんじゃないかな。自分の生死がかかっているわけだし。

「ローレンがレオを救う存在だって説明できればいいんだけど」

「うーん。じゃあ、リンネが夢でお告げされたとかそういうのにしてみたらどう?」

「適当だなぁ。そんなの信じるわけないじゃない」

「だって正直困るんだよね、こっちだって」

 ローレンの声が尖った。私はちょっと驚いて彼女を見つめる。予想よりも真剣に、彼女は怒っていた。

「本当なら、私がレオ様の隣にいるはずだったんだよ。小説通りなら、もっと早くレオ様とも出会っていたし、リンネは嫌われていて、私がレオ様に求められていたんだよ」

「ローレン?」

 ローレンの顔が真っ赤だ。そして目が、潤んでいる。泣いているのかと思ったら胸がざわついて、私はどうしたらいいのか分からなくなった。

「みんな、リンネのせいだよ! レオ様が助からなかったら、私、一生リンネを恨むから!」

 言いたいことだけ言って、ローレンは走って行ってしまった。
 足おっそ……と思いつつも、私の心は暗く沈んでいた。

「レオが助からないのは……私のせいなの? だったらどうすればいいのよ」

 レオを救いたいって思ってた。そのために、頑張ってきたつもりだった。なのに、そのせいでレオは助からないの?

 私は困りに困っていた。もう八方塞がりだ。
 分かっているのは、レオを助けられるのはローレンだけということ。それなら、少しでも小説の内容に近づけなければならない。