そんな日が一週間ほど続いたある日。私は帰り間際、クロードに呼び出された。

「どうしたの? クロード」

「ねぇ、リンネ。もしかしたらあの子が、君の言っていた予言者かい?」

 考えてみれば、頭もよく冷静なクロードがそれに気づくのは当然のことだった。けれど、浅はかな私は、それを予想してはいなかったのだ。

「えっと、いや、その、違う違う。彼女は学園の同級生なだけ……」

 必死に誤魔化そうとしたけれど、自然に目が泳いでしまう。くう、嘘のつけない自分が恨めしい。

「リンネが、レオの嫌がることを率先してするはずがないことくらい、僕でも分かるよ。それでもレオの苦手な女の子を連れてきたということは、彼女をレオに近づける必要があったってことだろう? それに、彼女はレットラップ子爵の娘だ。僕が持っている魔術書を入手してくれたのはレットラップ子爵なんだよ」

「え?」

 なんて偶然。……いや、偶然じゃないのかも。これこそ、運命なんじゃないかな。

 胸のモヤモヤが大きくなる。こんな風に感じていることをクロードに知られたくなくて、ワザと明るい声を出した。

「ローレンは絶対にレオを救ってくれると思うの。だから……その」

「リンネが疑っていないのは分かるよ。もしかして、レオの呪いを解いてくれるのかもとも思っている。……でも」

 クロードは怪訝そうな顔をしてちらりとふたりを見る。レオは私を見送ろうと待っていて、一緒に帰るローレンもまた、そこで待っている。

 ローレンが一生懸命レオに話しかけていて、レオは口もとを手で押さえていた。

「僕はね、彼女が君とレオの仲を引き裂いてしまうのではないかと心配なんだ」

 クロードがあまりに真面目な顔をしているから、私は思わず笑ってしまった。

「やだな。私とレオはそんなんじゃ……」

「婚約もしてるのに?」

「それは、他の女性に嫌悪反応が出るからでしょう? 治れば、もっとふさわしい令嬢と婚約しなおすに決まってるじゃない」