翌日、私はローレン子爵令嬢にお茶を飲みに来てくださいと招待状を出した。初めて自分からお茶会をしたいと言った私に、母は感激のあまり涙目になっている。
たかがお茶会でそんなに喜ばないで欲しい。まるで私が今まで令嬢失格だったみたいじゃないか。
そして、三日後。ローレンが私の屋敷へやってくる。
「まあまあ。リンネに女性のお友達ができるなんてうれしいわ。さあさあこちらにいらして」
「お母さま。おもてなしは私がしますから結構です」
「あなたは気が利かないから、心配なのよ」
いつまでも居座ろうとする母親を追い出し、ようやくふたりきりになった私とローレンはホッと息をつく。転生者同士だということも分かっているので、礼儀作法は早々におさらばだ。
私は早速、本題に取り掛かった。
「ねぇ。ローレンのこと、レオとクロードに言っちゃダメかな」
「え?」
「実は……レオの腕の文字が魔術だって言っちゃったの。そしたら誰から聞いんだって問い詰められちゃって」
「は? バッカじゃないの! そんな眉唾な話、信じるわけないでしょう?」
「信じてはくれたけど……」
あの時の状況をローレンに説明すると、彼女はあきれたような顔をした。眉根を押さえ、ため息とともに吐き出す。
「私が教えたなんて、絶対に言っちゃダメよ。魔女扱いされて捕まっちゃうじゃない!」
「レオはそんなことしないよ」
「するわよ。少なくとも今の時点では。私とレオ様の間に信頼関係が出来上がってないんだもの」
なるほど。ローレンの言うことも一理ある。とりあえず、これ以上、ローレンのことはばらすなと言われたので、何度も頷いておいた。