本当は、学園には戻らず、放課後をリンネと走り回って過ごしたかった。復学を受け入れたのは、あまりにリンネがしつこかったのと、婚約を了承させるのに、都合が良かったからにすぎない。
リンネが側にいて笑ってくれるだけで満足していたはずなのに、死ぬかもと思えば少しばかり欲が出た。
リンネに俺の痕跡を刻みたかった。彼女にとって何でもない人間のまま命を終えたくない。たとえ短い間でもいい。彼女の伴侶、それが叶わないのならば、婚約者でもいい。
彼女の人生に、自分の名を残したかった。
リンネに言うには、あまりにも独りよがりで情けない願いだ。だから、〝復学のための女除け〟という建前は、俺にとって都合が良かった。
神妙に告げると、クロードはぱたんと魔導書を閉じ、その太い本で俺の頭を叩いた。
「痛いじゃないか」
「馬鹿なことばかり言うからだよ。僕は諦めないよ。君を死なせない方法があるはずなんだ。そのためにずっと研究しているんだからね。見くびらないで欲しい」
目の前で、諦めているのはお前だけだと突き付けられ、苦しくなる。死が分かっているならば、諦めたほうが楽だ。そのほうが、余計な希望を抱かなくて済む。
そう思うのに、クロードはそんな俺を馬鹿だという。
「……俺は」
「リンネを泣かせたら承知しないよ、レオ。君はもっと欲張りにならないといけない」
そう言うと、クロードは、これ以上は聞かないとばかりに部屋を出ていった。
俺は、胸のざわつきを抑えられないまま、目を伏せた。
リンネが側にいて笑ってくれるだけで満足していたはずなのに、死ぬかもと思えば少しばかり欲が出た。
リンネに俺の痕跡を刻みたかった。彼女にとって何でもない人間のまま命を終えたくない。たとえ短い間でもいい。彼女の伴侶、それが叶わないのならば、婚約者でもいい。
彼女の人生に、自分の名を残したかった。
リンネに言うには、あまりにも独りよがりで情けない願いだ。だから、〝復学のための女除け〟という建前は、俺にとって都合が良かった。
神妙に告げると、クロードはぱたんと魔導書を閉じ、その太い本で俺の頭を叩いた。
「痛いじゃないか」
「馬鹿なことばかり言うからだよ。僕は諦めないよ。君を死なせない方法があるはずなんだ。そのためにずっと研究しているんだからね。見くびらないで欲しい」
目の前で、諦めているのはお前だけだと突き付けられ、苦しくなる。死が分かっているならば、諦めたほうが楽だ。そのほうが、余計な希望を抱かなくて済む。
そう思うのに、クロードはそんな俺を馬鹿だという。
「……俺は」
「リンネを泣かせたら承知しないよ、レオ。君はもっと欲張りにならないといけない」
そう言うと、クロードは、これ以上は聞かないとばかりに部屋を出ていった。
俺は、胸のざわつきを抑えられないまま、目を伏せた。