男性が好きな歌手は、光も好きな歌手だった。泣き出してしまいそうになる優しい歌声をしていて、心の底に響いてくるまっすぐな歌詞に光は何度も泣いている。

「申し訳ありません。このCDはまだ入荷されていなくて……。一週間後でしたら入荷できていると思うんですが……」

「そうですか。わかりました、また来ます」

そして一週間後、男性は本当に来てくれた。そして光が「私もその歌手が好きなんです」と言うと、男性は嬉しそうに笑って色々話をした。

これが、尚との運命の出会い。



「光、待った?」

「ううん。今来たところ」

出会いから三年後、光と尚は友達という関係を築いていた。光にとって初めての友達だ。尚とはたくさんの場所で遊び、友達という存在がこんなにも大きいのだと教えられる。

カフェでお茶をしたり、カラオケに行ったり、一緒に旅行に行ったり、光にとって尚は初めて心を許せる相手となっていた。しかし、まだ過去のことは話せていない。