<ハナエside>
夜7時。
「若瀬くん?」
待ち合わせ場所のカフェの中に、若瀬くんの姿を見つけた。
メガネをかけて本を読んでいた若瀬くんは、視線を上げて私を確認すると同時に笑った。
だけどその顔が、すぐに不機嫌になっていく。
「遅せー」
「え、うそ、ごめん」
不機嫌だって思った顔が、今度はまたおかしそうに笑ってく。
「うそだよ。つーかまだ10分前じゃん」
「あ、ほんとだ」
彼の前に座って店員さんにコーヒーを注文したあと、改めて若瀬くんに視線を向ける。
「………」
「ん?」
「いや…」
バチって合った目に、今更妙に緊張してきた。
話しって、なんだろう……
コーヒーが運ばれてきたあと、砂糖1個とミルク1個を入れて、一口飲んだ。
喉に詰まる感じがするのは、緊張のせい?
「行ってないんだって?」
「え?」
「カッシーんとこ」
「……」
思わず顔を伏せたくなるその話題に、視線はやっぱりどんどん下がっていく。
「今は仕方ないか。カッシーもあんなだし」
ひどい女、かな。
あんな状態の柏木くんを放っておくって……
友達として、最低かな。