<倉田side>




「はい、律くん」

「お、サンキュー」


朝7時30分。

新聞を読むテーブルに、コーヒーが置かれた。

湯気が立って熱そうなそれは、一緒に住んでいた数ヶ月前、毎日飲んでいたのと同じ味。

砂糖が1個とミルクが1個。

言わなくても俺の好みを覚えてくれていたことが、なんかすごい嬉しかったりして。


「今日の夜ね、若瀬くんに会ってくる」

「え?」

「…あ、ダメだった?」


一応彼氏だからかな。

申し訳なさそうに俺を見るハナエちゃんは、少し不安そう。


「いや、ダメじゃないけど」

「話したいことがあるって言われたの」

「そっか」


なんの話しだろうって思うくらいなら、束縛とかにはなんない、よな?


「じゃあ俺、仕事終わったらカッシーんとこ行ってくるかな。杉内に任せっきりになってるし」

「うん…」

「終わったら連絡してよ。迎えに行くから」

「でも、」

「いいじゃん。ついでだし、一緒に帰ろうよ」

「うん…そうだね」



そんな約束をして、まだ熱いコーヒーを飲み干した。