もう、柏木くんがどんな顔をしているのかも、わからない。


頭がクラクラして……


もう……



「…お前見てると、聞こえんだよ」



クラクラ揺れる頭の中に、

柏木くんの声だけが、入ってくる……



「ハナエが好きだって思うたび、……裏切り者って、陽菜の泣いてる声が聞こえんだよ…」

「、…」



頭がクラクラして、息がうまく吸えなくて……

体全部が、揺れてるみたい。


揺れる視界の中で、涙で滲む視界の中で……

柏木くんと、目が合った。


虚ろな目をした柏木くんが、近づいてくる……



「…それとも、一緒に謝る?」

「、」

「向こうで一緒に……陽菜に謝る?」

「、…」



柏木くんが手を伸ばして、私を捕まえようとする。

このままじゃ二人とも倒れちゃうってわかるのに、意識が朦朧として動けない。


ああもうダメだ、倒れるって思った直前、

突然、後ろのドアが勢いよく開いた。