その後、ジェラールは自国民を守るために、密漁者と疑わしい連中を捕らえようとした。
 ところが、密猟者達は逃げるどころか反撃してきたのでそのままやり合いとなり、結果として密猟者達は大怪我を負った。

 このことに対して、アリスタ国側はラングール国が国民を不当に傷つけたとして事情説明を要求し、ラングール国側もこれまでの謝罪と国境の不可侵を改めて要求した。
 ところが、交渉に立ったアリスタ国側の代表者はラングール国側の言い分は事実無根だとしてそれを拒否しただけでなく、ラングール国は正当な理由なくアリスタ国民を攻撃するような残虐で野蛮な国民であると宣言したのだ。

「取り返しが付かなくなる前に、もう一度話し合いをするべきだな」
「使者を送りましょうか?」
「ああ。段取りを頼む」

 ジェラールは疲れを感じて眉間を解すように指で押す。

「陛下はここ最近、ずっとお休みなく働かれております。少しお休みになられては?」
「大丈夫だ」

 国内にも医療体制の整備や教育の充実、景気の向上などやらねばならないことはたくさんある。できるだけ不穏な芽は摘んでおきたい。休む暇などないのだ。

「しかし、陛下の体調が崩れるとよくない状況が発生しますし」

 ラルフは眉を寄せる。
 竜王は、ただの王としての存在ではない。
 その気分により嵐などの天変地異が起るし、精神状態がよければ国全体が疫病などが抑え込まれるという恩恵が発生する。
 現に、ララがいなくなった日は動揺したジェラールの影響で季節外れの嵐が起きた。