「──ダメ!」


叫んで咄嗟に駆け出した私は、彼女の細い身体にしがみつく。

私を振り切ろうともがく彼女から絶対に手を離さず、力ずくでなんとか手すりから引きはがした。

ふたりして地面に倒れ込み、私は肩で息をしながらのっそりと上体を起こす。あと少しで飛び降りていたかと思うと、今になって心臓がバクバクと鳴っている。

菫さんも立ち上がる力が入らないらしく、うなだれたまま泣き叫ぶ。


「なんで……っ、なんで、私なんかを……!」
「菫さんには、生きていてほしいから」


菫さんは決して悪い人じゃない。

あの投稿もきっと衝動的にしたもので、冷静になったら悪いことをしたと自覚したから消したのだろう。本当に私を恨んでいたら、ずっと消さずに残しておくはず。

それになにより、ひどく苦しんだからこそ、これからもっと素敵な体験をしてほしい。

彼女は涙でぐしゃぐしゃになった顔を、悔しそうに歪ませた。


「偽善はたくさんよ。なにもかも恵まれているあなたに、私のつらさなんてわかりっこない」


再び吐き捨てられた言葉に、私はぴくりと反応する。今になって、反論したい気持ちがじわじわと込み上げてくる。