「見た目通り優しいところもあるけど、実はプライドが高くて気分屋なのよ、あの人。エムベーシックから出向して以来、それがさらに強くなった。事実上左遷されたのが心底気に入らなくて、慧を恨んでばかりで、私に八つ当たりするようになってたの」


彼女の口から語られるのは、意外すぎる増田部長の素顔。

彼がエムベーシックから左遷されてきたという噂は当初ちらほらあったのだが、仕事ができない印象もないし、人当たりのいい性格もあって、噂はすぐに消えた。

しかし左遷されたのが事実なら、自分より年下の慧さんが認められ、社長という座についていることを恨んでもおかしくはない。

もしかして、色弱のことを話したのも、私が慧さんに愛されていないと思うように仕向けたのだろうか。あのときの部長は少し雰囲気が違っていたし……。

彼の隠された一面に動揺する私に構わず、菫さんは一途な想いを吐露する。


「私はないがしろにされているってわかっていたけど、それでも優しい彼を信じたかった。妊娠したって報告したときはすごく喜んでいたし、『一緒に育てよう』とも言ってくれた。そのときの愛情を、ずっと持っていてくれるはずって」

「菫さん……」