彼の名前が出され、胸の奥で鼓動が重く響いた。菫さんは苦い笑みをこぼす。
「最初は複雑だった。試しに付き合っただけとはいえ、一度は好きになった人だから。でもそれは昔の話で、別れたのも私が彼の事情を受け入れられなかったせいだし、未練はまったくない。純粋に祝福したいと思ってたわ」
ある程度予想していたが、やはりふたりは一応付き合っていたらしい。
〝彼の事情〟というのは、おそらく色弱のことだろう。菫さんも知っていたのだと思うと、少し複雑な気分になる。
彼女は今もその想いを持ち続けているわけではないようだ。以前言われた、『ふたりは運命の相手だったのね、きっと』という言葉は、やはり本心なのだと思う。
ところが、彼女はどんどん険しい面持ちに変わっていく。
「なのに、あなたが知らない男性とふたりでいるものだから、一気に憎らしくなって、ヤケ酒をして……気がついたらあの投稿をしてた」
それを聞けば、幸せな結婚をしているくせに他の男性とも一緒にいたことが許せなくて、妬みに拍車がかかってしまったのだろうと理解できる。
けれど、それよりもお酒を飲んだということに驚いて、私は思わず口を挟む。
「最初は複雑だった。試しに付き合っただけとはいえ、一度は好きになった人だから。でもそれは昔の話で、別れたのも私が彼の事情を受け入れられなかったせいだし、未練はまったくない。純粋に祝福したいと思ってたわ」
ある程度予想していたが、やはりふたりは一応付き合っていたらしい。
〝彼の事情〟というのは、おそらく色弱のことだろう。菫さんも知っていたのだと思うと、少し複雑な気分になる。
彼女は今もその想いを持ち続けているわけではないようだ。以前言われた、『ふたりは運命の相手だったのね、きっと』という言葉は、やはり本心なのだと思う。
ところが、彼女はどんどん険しい面持ちに変わっていく。
「なのに、あなたが知らない男性とふたりでいるものだから、一気に憎らしくなって、ヤケ酒をして……気がついたらあの投稿をしてた」
それを聞けば、幸せな結婚をしているくせに他の男性とも一緒にいたことが許せなくて、妬みに拍車がかかってしまったのだろうと理解できる。
けれど、それよりもお酒を飲んだということに驚いて、私は思わず口を挟む。