しばし会社や彼女のプライベートの近況を聞きながら、パスタをいただく。私もそろそろ慧さんとのことを当たり障りのない程度に相談しようと思っていたとき、彼女がなにやら真面目な表情になって言う。
「ねぇ、ひとちゃん。あんまり深く考えないで聞いてほしいんだけど」
「なに?」
妙な前置きを怪訝に思い、首をひねってフォークを置くと、麻那はやや遠慮がちに話し出す。
「つい昨日、偶然見たの。会社のエントランスで、社長が社外の女の人とふたりで会ってるところ」
聞き捨てならない内容に、私は息を呑んだ。まさかと思いつつ、真っ先に思い浮かんだ女性の特徴を挙げてみる。
「……その女の人って、長い黒髪のほっそりした美人だった? 二十代後半の」
「そうそう! なんだ、ひとちゃんも知ってる人かぁ」
麻那はどこかホッとした様子だが、私は胸がざわめいて仕方ない。瀬在さんの話では、大学以降はずっと関わりがなかったはずだけど、どうしてふたりで会っていたのだろう。
「社員に目撃されて当然の場所だし、不倫とかそういう雰囲気ではなかったんだけど、なんかただ事じゃなさそうだったんだよね。気になっちゃってさ」
「ねぇ、ひとちゃん。あんまり深く考えないで聞いてほしいんだけど」
「なに?」
妙な前置きを怪訝に思い、首をひねってフォークを置くと、麻那はやや遠慮がちに話し出す。
「つい昨日、偶然見たの。会社のエントランスで、社長が社外の女の人とふたりで会ってるところ」
聞き捨てならない内容に、私は息を呑んだ。まさかと思いつつ、真っ先に思い浮かんだ女性の特徴を挙げてみる。
「……その女の人って、長い黒髪のほっそりした美人だった? 二十代後半の」
「そうそう! なんだ、ひとちゃんも知ってる人かぁ」
麻那はどこかホッとした様子だが、私は胸がざわめいて仕方ない。瀬在さんの話では、大学以降はずっと関わりがなかったはずだけど、どうしてふたりで会っていたのだろう。
「社員に目撃されて当然の場所だし、不倫とかそういう雰囲気ではなかったんだけど、なんかただ事じゃなさそうだったんだよね。気になっちゃってさ」